横浜国立大学大学院 先進実践学環

勝亦 弦揮さん

先進実践学環で何を研究していますか?

データを駆使して企業の経営課題や社会経済の諸問題を解決することを目指す「マーケティング・サイエンス」という研究分野で、いま日本で深刻化する“空き家問題”の緩和を目的とした、物件の空室期間を決定する要因についてのデータ分析をしています。

ご存知の方も多いと思いますが、いま日本では出生率の減少や高齢化の進行、そして大都市への人口の一極集中など、さまざまな理由で、全国的に空き家が増えています。

空き家が増えると何が問題かと言うと、まず住人の数が減ることで地域コミュニティが崩壊します。同時に、放置された住居が多くなると、必然的に衛生面や治安面も悪化していきます。つまり空き家が増えると、エリア全体の魅力と活力が大きく低下するわけです。

この空き家問題を少しでも緩和して、地域創生につなげられたら、との思いで始めたのがこの研究です。具体的には、不動産企業から提供いただいた全国200万件の物件データを用いて、物件の築年数・立地・設備などのさまざまな条件と、空室期間の長短との因果関係を調べています。

地域課題の解決に貢献したいと考え始めたのは、高校生の頃でした。私が通っていた横浜市の高校で、地元にある公営団地の中の商店街の活性化についてグループ研究をする機会があったんですね。そこは昭和の時代に建てられた古い団地で、住人が減り続けた結果、商店街も衰退の危機にありました。ここをいかに盛り上げるかについてみんなで考えたんです。この経験が、いま取り組んでいる空き家問題に目を向けるきっかけになりました。

先進実践学環を選んだ理由は?

文理融合・異分野融合を掲げた独自のカリキュラムに惹かれたのが大きいですね。

僕は明治大学の総合数理学部出身で、割と早い段階で修士に進もうと決めていたんですが、学環との出合いは偶然でした。ある時、なにげなく自宅から一番近い国公立大学の大学院をインターネットで検索してみたところ、横浜国立大学が出てきて、それに紐づくかたちで先進実践学環のサイトを見つけました。そこで初めて学環の存在を知ったんです。

よく調べてみると、4つの大学院(国際社会科学府、都市イノベーション学府、環境情報学府、理工学府)の授業を自由に選択できると書いてあります。これなら、自分のやりたいデータ分析を行う上で、領域横断的にいろんな分野の知識が活かせそうだ、と思ったのが大きな決め手でした。

入学してわかった先進実践学環の魅力は?

最大の魅力は、何と言っても自由度の高さだと思います。

僕の研究分野であるマーケティング・サイエンスは、数学や経営学、マーケティングなど、さまざまな分野が融合してできたものです。なので、文理の垣根を越えて研究に役立つ授業を自由に選択できる学環のカリキュラムは非常にありがたいですね。

それに加え、時間的な自由度の高さも理想的です。先進実践学環は必修の授業が少なく履修を自由に組めるため、自分の時間を確保しやすいと言えます。

大学院生の本分は、当然ながら研究と勉強です。しかし別の見方をすると、院進するということは、社会人になる前にさらに2年長く大学にいる状態、ということでもあります。つまり、大学院生だからこそ、卒業後に就職に有利になるような、勉強以外の部分も頑張って良いのでは? と僕は考えています。

実際、周りの大学院生には企業のインターンシップをしている人もいますし、僕は僕で大学生向けの就労支援のボランティア活動を行っています。社会人学生の方にとっても、学外での活動と研究を両立できる学環の時間的自由度の高さは魅力的なのではないでしょうか。

印象に残っている授業はありますか?

「地域創造論」という都市イノベーション学府の授業が思い出深いですね。これは学生同士で5人のグループを組んで日本の地域を一つ選び、そこを2050年までにどう発展させたいか、そのためにはどうすべきかをディスカッションしながら考えていく授業です。

僕たちのチームは秋田県秋田市を選びました。秋田市は子どもの学力水準が全国でもトップクラスで、林業や洋上風力発電などの産業も盛んな土地です。にもかかわらず、人口減少率が日本一多い市なのです。この秋田市の長所・短所を踏まえた上で、どう発展させていくかシミュレーションするのは、地域課題の解決をテーマに研究している自分にとって、非常に学びの多い時間でした。
今あるデータを見るだけでなく、地域を長期的な視野で捉える癖がつき、自分の成長を感じます。

今後の進路や目標について教えてください

自分がこれまで携わってきたデータ解析とそれを使った地域創生。これを活かせる仕事がしたい、と思って就職活動をした結果、コンサルティング系の企業に内定をいただきました。入社後はデータサイエンスの部門に配属される予定です。

受験生の方にアドバイスをお願いします

大学院進学を考えている人には、2種類のタイプがいると思います。まずは、何かに強い興味があり、研究したいことが決まっている人。そして2番目はまだ自分でやりたいことが定まっておらず、就職する前に大学院に行ってもう少し学んでみようかな、と思っている人。僕はどちらのタイプの人にも、先進実践学環をおすすめできると思っています。

例えば、やりたいことがハッキリしているタイプの人の場合、先ほどもお話ししたように、学環には分野を越えた知識を得やすい環境が整っているので、研究をさらに幅広く、かつ奥深いものにできると思います。

逆に、まだやりたいことが決めきれていないタイプの人も、学環の幅広い授業カリキュラムを経験する中で、研究テーマの方向性や柱となるものを見つけやすいと思うんです。迷っているなら、ぜひ飛び込んでみてはどうでしょうか。