横浜国立大学大学院 先進実践学環

教育理念・目的

先進実践学環の理念

私たちの生きる21世紀、気候変動や経済のグローバル化、人口動態の大きな変化などによって、それまで誰も経験したことのない出来事が次々と発生し、人類は多くの課題に直面しています。こうした背景から、2015年、国連は「持続可能な開発のための国際目標(SDGs)」を採択し、さまざまな課題を解決しつつ経済発展を目指す、安心・安全で持続可能な社会の構築を目指すことになりました。また、現代においては、デジタル化と都市化が急激に進み、多様な価値観を持つ人々が出会う機会が格段に増えています。ここではさまざまな民族、性別、年齢などの人々が共生し、参加可能な成熟社会を実現させることが求められています。

近代から現代にかけて、科学技術の進歩により、学問の世界は大きく発展してきました。これまで、高度な専門性を持った科学技術が人類の幸福と平和の実現に大きく寄与してきたことはまぎれもない事実であり、今後も果たすべき役割は大きいでしょう。しかし冒頭で記したような新しい事態を迎えた今、既存の固定観念にとらわれない価値を創出することが必要です。学問の世界もまた、これと無縁ではありません。

また、近年では新たな未来社会「Society 5.0」の実現が目指されています。これは、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムを作りあげることによって、経済発展と社会的課題の解決を両立する社会です。そこで中核とされる技術は、ビッグデータ解析を行うための数理やデータサイエンスと多様なサービスを自動化するための人工知能(AI)です。それらを担う知識・技術を備えた理系人材の育成が急務とされています。一方で、私たちの豊かな暮らしや未来を創造するためには、人間の持つ多様な価値観を尊重し、機械にはできない人間固有の能力を発揮することも求められています。そこでは長年にわたって蓄積されてきた人文社会科学の知から多くを学ぶ必要があります。Society 5.0を構築するために、超スマート化を実現する技術的な視点とあわせて、社会を構成する人間の活動を科学的、体系的に理解できる文理融合・異分野融合の視点を備えた人の役割は、今後ますます大きくなっていくに違いありません。

さらに、日本においては、人生100年時代を迎えるにあたって、学部卒業生だけでなく、社会人、シニアを対象としたリカレント教育(学び直し)を実践する場としての大学院も求められています。

横浜国立大学はすでに、5つの大学院修士課程を有し、人文系、社会系、理工系の学問分野を網羅して、高度な専門性に基づく教育研究の場を提供してきました。冒頭で述べた社会の変化に対応していくためには、従来の学問分野の専門性をより深化させながら、それぞれの学問分野を相互に関連させることが必要です。学生が自発的で自由な発想に基づき、まったく新しい価値を創造することのできる研究の場を新たに用意することが急務であると考えました。

こうして、2021年4月、近未来の超スマート社会「Society 5.0」の構築・維持・発展の場面で活躍できる人たちの育成を目指し、全学連係の運営によってスタートしたのが、「大学院先進実践学環」(修士学位プログラム)です。

教育目的 : 育てる人の姿 

先進実践学環では、現在の社会的ニーズを踏まえ、また独自に行った企業調査の結果をもとに、文理融合・異分野融合の観点から、選択した研究テーマごとに、以下の能力の修得を目指しています。 

応用AI
  先端的なAI技術について幅広い知識をもち、企業での応用を提案できる能力 
社会データサイエンス
  データサイエンスの技法を習得し、企業の経営に活かすことができる能力
リスク共生学
  環境や都市,産業に潜む危険を理解し、幅広くリスクマネジメントできる能力
国際ガバナンス
  グローバル化した経済社会の中で課題発見・解決できる能力
成熟社会
  法学の素養をベースに、企業や社会のコンプライアンスに配慮できる能力 
人間力創生
  歴史や文化について見識を持ち、社会における課題を分析できる能力
横浜アーバニスト
  都市のあり様を俯瞰して、まちづくりや都市計画をマネジメントできる能力 

私たちは、数理・データサイエンスなどに関する理系的な素養を身に付け、人文科学・社会科学的な知識を体得することで、近未来の超スマート社会が抱えることになる諸課題を自ら予見し、その解決策を探る能力や、課題を抱える者と解決策を持つ者をつなぎ、新しい価値観やサービスを生み出すことのできる能力を備え、専門性をより広く、より深く磨き上げ、Society 5.0の構築や普及の様々な場面で活躍する人の養成を行っていきます。