横浜国立大学大学院 先進実践学環

吉田 涼香さん

先進実践学環で何を研究していますか?

研究分野は「植物系統地理」。植物学を専門にされている倉田薫子先生の研究室に所属して、主に伊豆諸島の御蔵島に生育しているコイワザクラの系統的起源と遺伝的多様性について研究しています。

コイワザクラというのは、日本の限られた地域にしか生育していない高山植物で、絶滅危惧種です。関東山地や丹沢山地、紀伊半島の冷涼な岩場に生える多年草で、伊豆諸島では御蔵島でしか自生が確認されていません。この花とは、学部時代に出会い、その可憐なビジュアルと希少性に惹かれ、研究してみることにしました。

具体的な研究内容としては、春から夏にかけて伊豆諸島御蔵島や紀伊半島などにフィールドワークに出かけ、コイワザクラやその仲間の生態調査を実施しました。その調査結果に加えて、DNA分析を行い、種間関係や分岐年代、遺伝的多様性についても調べています。

先進実践学環を選んだ理由は?

出身が福井県の若狭湾のあたりで、自然の多い場所だったこともあり、幼い頃からそのへんの道端に生えているような身近な草花が好きだったんです。小中学生の頃は自由研究で草花の標本を作りましたし、中高生の頃も自主的にいろんな植物の研究も行いました。

将来は理科の先生になって、植物の魅力について子どもたちに伝えたいなと思って横浜国立大学の教育学部に進学したんです。でも、もっと専門性を高めたいという気持ちもありつつ、卒業研究がとても楽しかったこともあり研究のほうに夢中になってしまって(笑)。それで先進実践学環に進学し、さらに倉田先生の研究室で研究を続けることにしました。

入学してわかった先進実践学環の魅力は?

自分の研究分野以外の学生や先生と関わる機会が多いのが魅力的ですね。自分の専門分野を磨くのはもちろん大事なのですが、殻に閉じこもっていると視野が狭くなりって研究のテーマ設定にも広がりがなくなりますし、交友関係も考え方にも幅が出にくくなると思います。

その点、異分野・文理融合をポリシーとして掲げていることもあり、学環は文理を越えた交流の場面が多々あります。私は理系の学生ですが、文系ならではの、理系とはまったく違う考え方や研究の進め方に刺激を受けることもよくありますよ。

印象に残っている授業はありますか?

「中国古典文学」や「日本社会史研究Ⅰ・Ⅱ」といった授業が印象に残っています。自分の研究分野とは直接的には関わりのない分野ではありますが、漢詩や古文書を読み込んだりするのは、純粋に知的好奇心を刺激されて楽しかったですね。

それと、授業を通して他の研究分野の人と仲良くなれたのもよかったです。例えば浮世絵の研究をされている方など、自分の研究だけに邁進していたら絶対に知り合えなかったような人と交流できるのも、学環の授業の魅力だと思いますね。

今後の進路や目標について教えてください

コイワザクラは絶滅危惧に指定されている植物なので、いま生育している個体がなくなってしまったらもう二度と見ることはできません。こうした希少な花の生態を深掘りし、その研究を発表することで、生物多様性や保全の重要性について、少しでも周りの人に伝えていけたら、と思っています。

今はコイワザクラの研究もほぼ終わっており、今後は論文にまとめていく予定です。これに並行して、現在は、シライトソウという植物の研究を行っています。今後は博士課程に進学し、さらに植物の研究を続ける予定です。

受験生の方にアドバイスをお願いします

学環への進学を考えている学部生の方にアドバイスをさせていただくと、自分の興味のあることはすぐに自主的に調べたり、見に行ったりする習慣をつけておくといいと思います。まずは行動してみるという積極性は、修士で研究を行う際に必ず生きると思います。