横浜国立大学大学院 先進実践学環

上山 信さん

先進実践学環で何を研究していますか?

先進実践学環での研究分野は「横浜アーバニスト」。これはざっくりと説明すると、都市にまつわるさまざまな社会的課題の解決手法を探りながら、未来志向の都市像のあり方を考える、という研究分野です。

そして私はかねてより“人間の移動にまつわる空間”について強い関心を持っていたこともあり、現在は横浜市にある特定エリアのバリアフリーに着目した研究を行っています。修士論文の題目は「市民参加によるバリアフリーまちづくりの更新視点に関する研究―横浜関内・関外地区の通りに着目して―」というものです。

バリアフリー法は、高齢者や障害者の移動の円滑化を目指して2006年に施行された法律ですが、実は2022年に、横浜市の関内・関外地区で18年ぶりに旧法(交通バリアフリー法)時代の基本構想が更新されたんです。私の修士論文は、その更新時に浮き彫りになった課題について、さまざまな角度から考察したものです。

先進実践学環を選んだ理由は?

学部時代は横浜国立大学の都市科学部・建築学科に在籍して、主に建築設計を学んでいました。このため、卒業後は建築設計の大学院に進学するつもりでいたんです。

しかし設計を学んでいくうちに、“人の移動に関わる空間”に、より強い興味を抱くようになりました。例えば階段や廊下、建築の外にある道や広場など、広い意味での移動空間ですね。そこで、建築設計からもう少し視野を広げ、建築を取り巻く環境全体についての課題解決ができないだろうか、と考えるようになりました。

これは言ってみれば、一つの分野だけにとどまらない、領域を横断するような幅広い興味です。これに取り組むとしたら、文理融合・異分野融合を掲げる学環はまさにうってつけの環境だと考え、いま所属している「建築計画研究室」の藤岡泰寛先生と面談させていただいたうえで、学環に進学しました。

入学してわかった先進実践学環の魅力は?

いまの研究室は、横国大の都市イノベーション学府の学生も多く在籍していて、実は学環から入ってきたのは私一人だけなんです。やや寂しい気もしますが(笑)、それでもやっぱり学環に入ってよかったなと思っています。

というのも、やっぱり学環に所属していることで、異分野の授業を受ける機会が多く視野が開けますし、しかも学環には「ワークショップ」という研究の中間発表を行う場があって、そこで他分野の研究をしている学生の発表をオンラインで視聴できるんです。これは大きな魅力ですね。

一見すると自分の研究とは関係ないようにも思えるんですが、研究の切り口に関しての気づきが得られたり、自分の研究のモチベーションが上がったりと、いろんな面で刺激を受けられるんですよね。

印象に残っている授業はありますか?

1年生のときに受けた「文芸文化論」という授業があったのですが、これは面白かったですね。

彦江智弘先生というフランス文学が専門の教授が講師だったのですが、例えば『古事記』を読み込みながら、そこに記された文章に対していろんな解釈を行い、みんなで考察していくような授業でした。先生のお話の面白さもさることながら、好奇心と知識欲を刺激されて、毎回すごくワクワクしました。

今後の進路や目標について教えてください

これから就職活動を始めるのですが、アトリエ系の建築設計事務所で働きたいと考えており、いまポートフォリオを作成している真っ最中です。

就職が決まったら、当然そこで建築の設計に携わることになると思いますが、先ほどから何度かお話している「人間の移動に関わる空間」という自分の中の興味と知見を活かすことで、建築を利用する人に、より豊かな生活体験をしてもらえればいいなと思っています。

受験生の方にアドバイスをお願いします

学環の魅力は、文理融合・異分野融合という言葉に集約されると思います。

一つの研究に没頭しているときは、とかく周りが見えなくなりがちです。しかし自分の研究とは異なる分野を学ぶことで、逆に「自分の研究が異分野の人からどう見られるのか?」という客観的な視点が自然と得られます。つまり異分野を学ぶことは、自分の専門分野にも大きなメリットがあるわけです。

そしてその時はわからなくても、蓄積された異分野からの学びが、いずれ役に立つことがきっとあると思います。大学を卒業して、まだ勉強や研究がしたいという思いが少しでもあるなら、やったほうが絶対いいです。ぜひ飛び込んでみてください。