横浜国立大学大学院 先進実践学環

金子 修汰さん

先進実践学環で何を研究していますか?

研究分野は応用AIで、医療福祉ロボットが専門の加藤 龍先生の下で、「筋電義手」の研究を行っています。

筋電義手というのは、何らかの理由で腕を失ってしまった人が装着するロボットハンドです。手を欠損してしまった人でも、手指を動かす腕の筋肉や神経は残っています。その筋肉が発する微弱な電気信号を「筋電」と呼ぶのですが、それをセンサーでキャッチし、手の代わりに電動のロボット義手を動かす、というシステムです。

筋電義手と一口に言っても、手首から先を欠損した人に装着する「前腕筋電義手」や、肩関節ごと欠損した人のための「肩義手」などがありますが、私が研究対象にしているのは、手先から肘までの関節を失った人を対象とした「上腕筋電義手」です。これを、より快適に装着してもらえるにはどうするか、というのをテーマに研究しています。

上腕筋電義手はソケットとベルトで吊って体に装着するのですが、前腕筋電義手とは違い、肘関節を含む分、1.5〜3kgほどと、非常に重くなります。これは装着する患者さんにとっては、かなり負担を感じる重量です。

研究室では実際の医療現場に伺う機会も多いのですが、私がお会いした患者さんの中には、日常生活でほとんど使用されていない方もいらっしゃいました。先行研究においても装着時間が3時間程度のケースがみられます。

本来、義手とは腕の代わりになって生活の質を向上させることを目的にしたもの。にも関わらず、長く装着していられないとなると、本来の目的をまったく果たしていないということになります。

そこで私は、患者さんが日常生活の動作をより簡単にしやすくなる機能性と、長時間でも装着し続けられる快適性を備えた上腕筋電義手の研究・開発に取り組んでいます。

先進実践学環を選んだ理由は?

幼い頃から工作やものづくりが好きで、小学生の頃に自分の工作作品が賞を取ったんです。その時、祖父をはじめ家族がものすごく喜んでくれたのを印象深く覚えています。その頃から、自分の作ったもので人に喜んでもらいたい、と漠然と考え始めました。

その後、高専と大学で機械工学を学んだのも、この体験がベースにあります。そして大学院への進学を考えた時に、異分野融合を掲げる先進実践学環であれば、自分の作ったもので人の役に立てる研究ができると確信し、こちらに進学を決めました。

入学してわかった先進実践学環の魅力は?

異分野融合という学環の掲げるポリシーがやっぱり最大の魅力ですね。今の研究室でも、筋電義手を必要とする病院と連携しながら研究を行っていますが、これは本当に大きなアドバンテージだと思います。

研究室に閉じこもって工学的な思考だけにとらわれることなく、実際に病院で医師と相談し、患者さんの顔を見て生の声を聞き、実際に使ってもらえるので、問題解決のために最短距離で進んでいける感覚があります。

また、学環には研究成果の中間発表的な授業として、学環の学生が全員参加する「ワークショップ」があるのも大きいですね。これは、各自が自身の研究についてプレゼンテーションし、その映像を学生がオンラインで視聴し合ってディスカッションしたり、質問を投げかけ合ったりするものです。

視聴する学生は理系・文系を問わないので、自分が当たり前だと信じて疑わなかったポイントについて、想像もつかないような角度から質問が飛んできたりするので、大きく視野が広がります。

印象に残っている授業はありますか?

「サイバーロボティクス」という授業です。現在の身体機能の支援や回復、拡張を行えるロボット技術と、実際にそれらが医療分野でどのように活用されているのかを学ぶことができます。

一年の最後には、実際にロボットを開発する課題も課されるので、自身の課題解決能力を磨くことにも役立ちました。

今後の進路や目標について教えてください

自分のものづくりの技術を通して、人の生活をより豊かにするロボットであふれる社会を実現したい、との思いから、あらゆる電子機器に使われる半導体を開発する企業に就職を決めました。学環で培ってきた知見を活かし、半導体デバイスで社会の発展に寄与できればと考えています。

受験生の方にアドバイスをお願いします

大学院で過ごす2年という時間は重要な期間であると同時に、非常に長い時間です。それだけの時間を費やすに足る研究テーマを見つけるために、まず自分の原点に立ち返り、何が本当にやりたいことなのかをしっかり考えることをおすすめします。

研究を続けていると、大きな困難に見舞われることも日常茶飯事です。しかし、それが本当にやりたいことであれば、熱意を失うことなく乗り越えられるはずです。そして異分野融合を掲げる学環なら、やりたいことに近いテーマも探しやすいと思います。受験、がんばってください。