2025年度ワークショップⅠ、Ⅱ
参加報告
11/22 (土) に先進実践学環ワークショップが開催された。多様な専門分野を持つ学生が一堂に会し、互いの研究や実践を共有しながら対話を重ねる場として、本学環の教育理念を表す会であった。工学、情報学、経済学、地域デザイン、教育学など、通常であれば交わることの少ない分野の学生が同じ空間で発表を行うことで、自身の研究を専門の枠を越えた広い文脈の中で捉え直す機会が自然と生まれ、この異分野融合型の学びの場こそが、先進実践学環ならではの大きな特徴であると改めて実感した。
私は「集積エレクトロニクスと社会展開」をテーマに、半導体の微細配線向けのプロセス改善に関する研究成果を発表した。生成AIの登場によるAIブームにより、半導体デバイス性能の向上は不可欠である一方、そうしたAI向けデータセンターにおける電力消費量の急増が課題となっている。私の研究では、そうしたデバイスの消費電力削減に向け、半導体の微細配線の低抵抗化に向けたプロセス開発を行っている。発表では、こうした研究の背景・目的・成果を明確に示すことを心掛け、専門外の参加者にも理解しやすい構成を意識した。分野を問わず様々な質問をいただき、プロセス条件の工夫や今後の改善方針について議論を交わした。特に印象的だったのは、工学系の視点だけでなく、社会科学系の参加者から「その技術が産業全体の中でどのような役割を果たすのか」「制約条件はどこから生じているのか」といった問いが寄せられたことである。こうした異分野からの問いに答える過程で、自身の研究を技術内部の問題としてではなく、産業構造や社会的要請の中に位置付けて捉え直す必要性を強く感じた。
また、他の参加者の発表を聞く中で、先進実践学環における学びの深さと広がりを実感する機会が多くあった。地域デザインや教育分野での発表では、課題の背景整理やニーズ分析が丁寧に行われており、研究の社会的位置付けが明確に示されていた。工学研究においても、技術的有用性だけでなく、研究背景や課題を明確にする姿勢が不可欠であると学んだ。また、材料系や情報系の発表からは、自分とは異なるアプローチや研究手法を知ることができ、視野が大きく広がった。分野は異なっていても「課題を多角的に捉え、他者と共有する」という姿勢は共通しており、異なる専門性を持つ学生同士が自然に議論を交わすことで、新たな視点や問いが生まれる様子が随所に見られた。
本ワークショップを通じて、研究テーマの価値や成果の位置付けは、技術的有用性だけでなく社会的・経済的文脈によって大きく左右されることを再認識した。技術開発を単なるプロセス改善に留めず、社会実装までの道筋を描く視点を今後の研究に取り入れたいと考えている。分野横断的な対話を日常的な学びの中に組み込み、専門の異なる相手に分かりやすく伝える力や、多角的な視点から課題を捉える力を養う環境が整っている点こそが、先進実践学環の魅力であると改めて感じた。この経験を今後の学修や研究活動に生かし、実践的な学びを深めていきたい。
先進実践学環 修士1年 艮翔太朗
2025年11月、横浜国立大学先進実践学環におけるワークショップという大きな節目を終えました。本学環は、従来の専門領域の枠を超え、多様なバックグラウンドを持つ学生が集う文理融合の学びの場です。今回の発表は、自身の研究を単なる技術開発として捉えるのではなく、将来の社会実装を見据えた大きな視点から捉え直す、非常に貴重な機会となりました。
私の研究テーマは、量子通信の実現に向けた量子メモリの開発です。先進実践学環の理念でもある、近未来の超スマート社会「Society 5.0」の実現には、サイバー空間で扱われる膨大な情報の安全性を確保することが不可欠です。しかし近年、量子コンピュータの発展により、現在広く用いられている公開鍵暗号が将来的に解読され得ることが指摘されています。自動運転や遠隔医療など、人命に直結するデータがやり取りされる「Society 5.0」において、このリスクは看過できない喫緊の課題です。そこで注目されているのが、量子を利用して通信を行う量子通信です。量子通信では、「一度観測されると状態が変化する」という量子特有の性質により盗聴を検知することが可能であり、理論上、極めて高い安全性を持つ通信を実現できます。私が取り組んでいる量子メモリの開発は、この量子通信を長距離にわたって実用化するために不可欠な要素技術です。光による量子信号は非常にデリケートで、長距離伝送の過程で減衰してしまいます。量子通信では従来の通信のように信号を増幅することができないため、途中で情報を一時的に保存し、適切なタイミングで次へと送り出す中継地点として量子メモリが必要とされています。この量子メモリの性能が、通信距離や通信レートの向上に寄与する重要な要素となります。
当日の発表を通じて改めて実感したのは、先進実践学環という環境のユニークさでした。一般的な物理系の学会発表では、技術の性能や理論に議論が集中しがちですが、本学環では異なる専門分野の学生や教員が参加するため、研究背景や目的といった前提の共有が特に重要となります。また質疑応答では、結果の妥当性や今後の課題に関する点にとどまらず、社会実装を見据え、研究が社会とどのように関わるのかという点に踏み込んだ指摘を数多くいただきました。専門領域の枠に留まっていては見落としがちな、研究の社会的意義や責任を再認識できる点こそ、本学環ならではの価値であると感じています。
本ワークショップで得られた多種多様なフィードバックを糧に、今後は実験の拡張に加え、研究成果がどのように実社会の課題解決へと結びつくのかという視点をより一層深めていきたいと考えています。
先進実践学環 修士1年 佐々木康多