石田 満恵 先生編(専門:サステナビリティ経営 /研究テーマ群:成熟社会)
今回のインタビューはサステナビリティ経営がご専門の石田満恵先生にお伺いします。
Q. 石田先生のご専門分野について教えてください。
石田 私の専門は、サステナビリティ経営やCSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)、そしてCSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)と呼ばれる分野です。これは、企業が社会課題を解決しながら、同時に、経済的な価値=利益を創出していくための経営戦略を研究する領域です。
CSRというと、寄付やボランティアといったイメージがありますが、CSVはそれをさらに進めて、社会課題の解決そのものを企業の経営戦略に組み込もうという考え方です。特に、企業が政府や自治体、NPO、大学などの異種セクターと連携しながら社会課題に取り組む「CSVアライアンス」と呼ばれる仕組みに注目しています。
Q. 研究テーマの魅力や面白さはどのような点にありますか。
石田 複雑で多様化している社会課題を、一つの組織だけで解決することは困難です。しかし、異なる立場の組織が協力する際に、なぜうまくいく場合とうまくいかない場合があるのか、そのメカニズムを解き明かすところに面白さがあります。
たとえば、味の素がガーナで推進している栄養改善プロジェクトがあります。現地の乳幼児の栄養不足という社会課題に対し、同社が現地政府や大学、NGOと連携しながら取り組みを進めているのですが、栄養改善によって乳幼児の死亡率が下がるだけでなく、現地での雇用創出や新規事業の確立にもつながっている点が特徴です。
国内の例では、キリンホールディングスの「絆プロジェクト」が代表的なCSVアライアンスの事例です。東日本大震災後に福島県産食品に対する風評被害が生まれました。この課題に対し、キリンホールディングスは、現地の食材とタイアップしたアルコール飲料を生産・販売するなど、新商品の開発を通じて、復興支援と企業成長の両立を実現させました。
Q. この研究テーマに取り組むようになったきっかけを教えてください。
石田 大学卒業後、私は約17年間、外資系IT企業で働いていました。そこではアライアンスマネージャーとして、企業同士のパートナーシップを構築する仕事に従事する機会がありました。
アライアンスというのは、表向きは協力関係でも、実は裏では利害が対立し、裏切りが起こりやすい関係です。実際、私自身もそうした難しさをビジネスの現場で何度も経験してきました。
転機になったのは、東日本大震災です。CSR活動として復興支援に取り組む中で、社会課題を共通の使命として掲げた連携は、非常に安定して機能することに気づきました。「なぜ社会課題を軸にすると、アライアンスは安定するのか?」その疑問を理論的に解明したいと思い、働きながら大学院に進学し、研究の道に進みました。
Q. 石田先生の授業では、どのようなことを学べますか。
石田 大学院では「サステナビリティ経営特論」を担当しています。この授業では、学生主体の輪読・発表・ディスカッション形式を採用しています。
学生が担当テーマを選び、事前に文献や事例を調べて発表し、それをもとに全員で議論します。私は最後にフォローアップを行い、理解が浅い部分や重要な視点を補足します。
また、毎回の授業後には必ず学生一人ひとりに「何を学んだか」「どこを深めるべきか」を整理させ、フィードバックレポートとして提出してもらっています。その提出内容も参考としながら学生一人一人の理解度を毎回確認し、次回の授業の補足説明時に反映させるようにしています。調べて、考えて、発表して、振り返りを行う。このプロセスを繰り返すことで、思考力が鍛えられます。
Q. 学外での社会活動について教えてください。
石田 学外では、日本経営倫理学会の理事を務めています。主に、学会誌の編集委員や国際交流委員の活動を通じて、学会の運営に携わっています。
研究成果を国内外に発信し、国際的な議論につなげていくことも、大学教員としての重要な役割だと考えています。
Q. 先進実践学環で学ぶことのメリットは、どのような点にありますか。
石田 先進実践学環の大きな特徴は、4つの大学院(国際社会科学府、都市イノベーション学府、環境情報学府、理工学府)の授業を自由に組み合わせて履修できること。つまり分野横断的に学ぶことができます。
私の専門である「成熟社会」の領域は、まさに少子高齢化や人口減少といった、日本が直面するさまざまな社会課題と直結しています。
一方的に知識を教わるのではなく、自分で社会課題や企業の取り組みを見つけ、考え、議論し、そして、振り返りを行った後に、フィードバックを受ける。そうしたプロセスを通じて、視野を広げながら思考を深められる場所、それが学環だと思います。
Q. 最後に、受験生へのメッセージをお願いします。
石田 社会課題に関心があり、それを理想論やきれいごとで終わらせたくない人に、ぜひ来てほしいと思います。
企業や社会の現実を直視しながら、「どうすればより良い形で解決できるのか」を考え続ける力が、この学環では身につきます。
自分の頭で考え、社会と関わりながら学びたい人にとって、とても刺激的な環境だと思いますよ。