横浜国立大学大学院 先進実践学環

木山 玲実さん

先進実践学環で何を研究していますか?

研究分野は「日本近世史」、主に江戸時代の庶民文化・生活について研究しています。具体的には、江戸庶民の病気観や外国観について、浮世絵と史料を用いて研究・考察した内容を、修士論文にまとめました。

江戸時代は浮世絵の出版が盛んで、今の金銭感覚で言えば200〜300円ほどで手に入りました。浮世絵にも、実はいろんなジャンルがあります。例えば、有名なものだと歌舞伎役者や遊女を描いた浮世絵がありますが、あれは当時の庶民にとっては最先端のファッションに触れられる、ブロマイド的な存在。

一方で、浮世絵には“かわら版”的な役割もあって、例えば江戸で疫病が流行ると、文字情報が多く載った浮世絵が登場し、予防法や養生法などを庶民に流布するという役割も果たしていました。例えばはしかに関する浮世絵は、俗に「はしか絵」と呼ばれて一つのジャンルになっていたりします。

私は主にはしか、疱瘡、コレラの3つの疫病に関する文献や浮世絵を見て、そこから読み解ける庶民の病気への向き合い方や対処の方法などを調べていきました。

疫病というのは、もともと朝鮮半島などの大陸から伝染してきたものもありますし、古代から海岸に漂着する外国人などは「鬼」や「異形」などと呼ばれたりもしました。つまり、当時の庶民にとっては病気も外国も、等しく未知のものであり、畏怖の対象だったわけです。

そこに類似性を見出してまとめたのが、『浮世絵からみる近世日本における外国観と病気観』という題目の修士論文です。

先進実践学環を選んだ理由は?

私は横浜国立大学の教育学部出身です。もともと日本史が好きで、特に歌川国芳の浮世絵が大好きでした。風刺がきいていて、どこかポップでユーモアもありますしね。

そういう背景もあって、将来的には歴史の先生をやりたいと思っていたんです。そこで、大学卒業後は、より日本史に関する専門性を高めるために先進実践学環に入学し、江戸時代の都市史や生活史などがご専門の多和田雅保教授の研究室に入らせていただきました。

入学してわかった先進実践学環の魅力は?

先進実践学環は、異分野融合を謳っているだけあって、分野の垣根を越えて授業が選択できます。なので、自分とはまったく異なる分野の人たちと関わりあえるのが魅力だと思います。留学生も多く在籍しているので、友だちもたくさんできましたね。

それと、私は一時期、横浜国立大学の附属図書館でラーニングアドバイザーとして選書などをしていました。その経験から言わせていただくと、横浜国立大学の附属図書館はかなり充実していてオススメです。さまざまな興味に応えてくれるので、研究がより捗りました。

印象に残っている授業はありますか?

都市イノベーション学府の矢吹剣一先生の「都市マネジメント」という授業が印象深かったですね。

都市の成り立ちや都市計画、歴史的都市の景観保全など、さまざまな角度から都市について学ぶことができました。もちろん、江戸時代の都市にもリンクする事象が多々あって、非常に学びの多い授業でした。

今後の進路や目標について教えてください

教育分野に特化したIT企業に就職が決まっています。小中学校のICT環境などを手掛ける会社ですが、そこでカスタマーエンジニアとして働く予定です。

もともと修士一年のときに、非常勤講師として小学六年生の授業をしていました。すごく良い経験だったんですが、そこで感じたのが、さまざまなアプリや採点のシステムなどがあるにもかかわらず、それらがうまく活用されておらず、もったいないな、ということでした。

それに加え、先進実践学環には、「IT技法通論」という必修科目があって、理系の学生だけでなく、私のような文系の学生も全員受けることになります。そこでITの基礎や最新事情を学べたことも、教育系のIT企業に就職したきっかけの一つです。

受験生の方にアドバイスをお願いします

大学を卒業し、就職すべきか、あるいは大学院に進むべきかで迷っている人もいると思いますが、もし迷っているなら院進するのはとてもオススメです。

特に文理融合を掲げる先進実践学環では、専門分野以外の授業を受けられる環境に身を置くことになるので、ものすごく視野が広がり、社会の潮流にも敏感になれます。

私自身も、先進実践学環に来ていなければ、そのまま教員になって、IT企業への就職など考えもしなかったと思います。ご自身の視野を広げるきっかけになると思うので、ぜひチャレンジしてみてください。